次世代ネットワークサービスを知るための【Diameter勉強会】 2-1
SUMMARY
- Diameterは、高度な通信制御を行う次世代認証プロトコル
- Diameterには認証以外にも、PCRF、OCS、OFCSを実現するための機能もある
- Diameterは、光回線の卸売やMVNOサービスの普及で、ますます注目を集めている
かもめエンジニアリング株式会社では、高度な通信制御を行うプロトコル、Diameter(ダイアメーター)に関する勉強会を定期的に開催しています。Diameterの基本情報からネッワーク認証サービスの最新動向までを網羅した会の模様を2回シリーズでご紹介します。
ネットワークサービスの認証で使われる最新プロトコル
【Q】Diameterとは何か?
【A】
様々なネットワークサービスの通信制御や認証において、必ずといっていいほど使われるプロトコルにRADIUS(ラディウス)があります。現在RADIUSは広く普及していますが、古いプロトコルのため近年の多様化するネットワークサービスへの対応が難しくなってきました。
そこでにわかに脚光を浴びているのが、通信制御プロトコルのDiameterです。
RADIUS(ラディウス=半径)の後継という意味を込めて、Diameter(ダイアメーター=直径)と命名されています。
PCRF(ポリシーおよび課金ルール機能)を実現
【Q】Diameterの用途は?
【A】
Diameterの用途は、RADIUSの代替としての認証プロトコルというだけにとどまりません。
標準化団体3GPP (3G、LTE、LTE-Advancedの標準化プロジェクト)において、Diameterは、次のような通信制御の領域で 標準仕様として規定されています。
-PCRF(Policy and Charging Rule Function=ポリシーおよび課金ルール機能)
-OCS (Online Charging System=オンライン課金システム)
-OFCS(Offline Charging System=オフライン課金システム)
通信制御とは、プロトコルで、ホストコンピュータや相手システム、中継装置との通信を実現するための機能です。OCS(オンライン課金システム)またはOFCS(オフライン課金システム)でユーザの通信状況を把握し、PCRF(ポリシーおよび課金ルール機能)によって、最適な通信ルールを適用します。
Diameterには、従来RADIUSが担ってきた認証の分野にとどまらず、PCRF、OCS、OFCSを実現するための高度な機能も備わっているのです。
より高性能な通信のニーズに対応
【Q】Diameterの特徴とは?
【A】
RADIUSと比較すると、Diameterの特徴がおわかりいただけるかと思います。
RADIUSは、規格化当時(1997年)の低いスペックのコンピュータを前提としていたために、 パケットに含められる情報量に制限があります。音声や映像などのサービスで必要な帯域量を通知する機能がなく、通信を暗号化するための規定もありません。
そういったRADIUSの課題を、すべて解決しているのがDiameterであると言えます。通信制御に限らず、幅広い用途での活用が想定できます。
詳しくは、図の比較表をご確認ください。
※以下サイトより引用。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080826/313463/?SS=imgview&FD=1321957939&ST=security
光回線の卸売によって生まれた、新たなマーケット
【Q】Diameterのマーケットは?
【A】
Diameterが注目された背景には、いくつかの要因があります。
まずはスマートフォン、タブレットなどモバイル端末の急速な普及、LTEの大容量化など通信業界の変革で、より高性能な通信制御のニーズが高まっているというところです。たとえば異種ネットワーク環境下や大規模災害時においては、従来のRADIUSの機能では物足りなくなってきている現状があります。通信制御そのものが、業界全体の大きな課題になっているのです。
それに加えて、2014年5月に、NTTが光回線サービスを開放することを発表しました。いわゆる、光回線の卸売ですね。これによって、格安スマートフォンサービスを手がけるMVNO(仮想移動体通信事業)の「格安SIM」や「格安スマホ」や、ISP(インターネット接続業者)さんなどが急速に台頭してきました。これによって、各キャリアさんの帯域制御、料金プランの設定変更などでも、Diameterの規格を使ったものが増えるのではないかと想定しています。
MVNOサービスでの活用事例
【Q】Diameterの活用事例は?
【A】
Webで公開されている情報で、当社の事例ではないのですが、IIJ(株式会社インターネットイニシアティブ)では、LTEによる高速大容量化対策として、通信制御にDiameterを採用しています。
Diameter上で動作しているのが、Gx(速度などの通信ルールの管理)とGy (クーポンなどの通信量の管理)です。
Gx、Gyは、ユーザの通信をリアルタイムに制御するための3GPPで規定されたインタフェースであり、同社では、NTTドコモ網を利用したMVNOサービスの通信制御において、Gx、Gyを実装しています。
この実装によって、次のような効果が生まれています。
-公正な利用の推進(一部のお客様によって帯域が占有される事態を回避)
-プリペイド型料金プランの実現(Gyによって通信量をリアルタイムに把握)
-継続的な接続性の提供(通信量を超過した際に切断させるのではなく、Gxでの速度制限を併用)
なお、詳細はお話しできませんが、当社でも既にDiameterの導入実績はございます。